内障の原因が様々なため分類が非常に煩雑で、緑内障を理解しづらくさせています。
緑内障はまず原因別に原発性、続発性、先天性の3つに大きく分けられます。
またこれとは別に隅角部の構造により開放隅角、閉塞隅角、混合型に分類します。
開放隅角とは角膜と虹彩(茶目の部分)の間にある房水の出口である隅角部は広く房水排出の妨げにはなっておらず、隅角部より以降の線維柱帯部が目詰まりを起こしたため房水が排出されずに眼内に溜まりすぎて眼圧が上昇するものです。
閉塞隅角とは角膜と虹彩(茶目の部分)の間にある房水の出口である隅角部が狭くなるために房水が眼外に排出されにくくなったため、房水が眼内に溜まりすぎて眼圧が上昇するものです。
混合型とは隅角部と線維柱帯部の両方とも房水排出の妨げになっているものです。
どの部分が原因で眼圧が上昇しているかが明らかで、レーザーや手術などの治療をどこに行えばよいのかわかるので、後者の分類の方が一般的です。
内障の中で最も多いものです。
あとで説明する正常眼圧緑内障もこの中に含めて分類されていることもありますが眼圧20mmHgを境に区別します。
隅角検査では隅角部は開放しており異常がないのですがその先の線維柱体以降に閉塞があるため房水がうまく排出されず眼内に溜まってしまい眼圧が上昇しその圧力に視神経が押し潰されると考えられています。
開放隅角緑内障は慢性の経過を取り発症から失明するまで40年余りあります。
進行は通常緩慢なので慌てずゆっくり時間をかけて治療方針を決めましょう。
視神経が押し潰されるのは主として視神経が眼球内に入り込むところ、視神経乳頭部で起こるため視神経乳頭は中心部の凹んだところ、陥凹が大きくなって行きます。これが更に進行すると視神経乳頭は蒼白化し更に進むと視神経萎縮となり機能を失ってしまいます。
隅角部が非常に狭くなったり閉じたりしているため房水が排出されにくく眼内に房水が溜まり眼圧が上昇し視神経が押し潰されると考えられています。
閉塞隅角緑内障は急性と慢性に分けられ急性から慢性に変わったり慢性が急性に変わったりすることもあり症状や経過は全く異なります。
急性のものは夜中から明け方にかけて急に隅角が閉塞することにより眼圧が急上昇し突然眼の充血、痛み、かすみ、頭痛、吐き気、嘔吐などの症状が起こります。
眼の症状よりも全身の症状が強いため他科救急を受診し治療が遅れる場合があります。
急性緑内障発作は3日間放置しただけで失明してしまう場合があります。
必ず他科担当医に眼が充血しかすんで痛むことを伝える必要があります。また急性緑内障は両眼性が半数あります。予防治療を受けることを勧めます。慢性のものは隅角部に虹彩と線維柱体が癒着しているところ(PAS)が広範囲にみられるのが特徴で眼圧の上昇は緩やかで自覚症状はほとんどありません。慢性隅角緑内障は開放隅角緑内障に比べて眼圧の変動が大きく緑内障治療薬を用いても眼圧が下がらないことがあります。閉塞隅角は、原発閉塞隅角疑い(PACS、隅角閉塞+、眼圧上昇-、PAS-)、原発閉塞隅角(PAC、隅角閉塞+、眼圧上昇+、視神経症-)、原発閉塞隅角緑内障(PACG、隅角閉塞+、眼圧上昇+、視神経症+)に分けられます。10~20年でPACSの10~20%がPACに移行しその後3~5年で10%がPACGに移行します。
正常眼圧緑内障では眼圧が正常値である以外は視神経乳頭の変化や隅角所見は原発開放緑内障とほぼ同じです。
眼圧が21mmHg以下の正常値であるのに緑内障特有の視野変化が起きて視野が狭くなり暗点ができます。
診断に迷う症例も少なくありません。
視神経や視野に変化を起こす他の疾患、特に脳梗塞、脳腫瘍、脳動脈瘤などの脳神経疾患がないこと、過去に外傷がなく眼疾患や眼の手術を受けて眼圧が一時的に上がっていたことがないこと、ステロイド等の眼圧が上がる薬物を長期にわたり使用したことがないことの確認が必要です。
眼圧が1日中21mmHg以下であることを確認するため日内変動を検査する必要があります。
強度近視や先天的に視神経の発達が不良な場合(視神経低形成)は、一見正常眼圧緑内障とよく似た視神経乳頭や視野の変化が現れる場合があり3~6ヵ月ごとに経過を診て判断するしかない場合があります。
無治療でも20%の人は5年以上視野にほとんど変化がありません。
強度近視(-8D以下)を10年以上観察すると13.2%で視野異常が出現しその60%以上で視野が進行すると報告されています。近視には近視特有の乳頭傾斜等で生じる構造的変化(γ-PPAが大きい。)による視神経障害があります。この障害は進行速度が遅く乳頭出血頻度が少ないです。一方それとは別に眼圧等の応力によって生じる篩状板の脆弱性による緑内障視神経症という視神経障害(β-PPAが大きい。)が存在しこの障害は進行速度が速く乳頭出血頻度が多いです。近視眼緑内障はこの2つの障害が重なった病態と考えられています。今のところその割合を簡単決める事はできません。個々のケースで診断と治療について医師と相談することになります。
胎児が母体内で成長する際に胎児の隅角部の発達に何らかの異常を生じたため隅角部から房水が排出されにくくなり眼圧が上昇し緑内障を発症します。
発達以上の程度により眼圧上昇の程度には差があり3歳までに発症する早発型と4歳以降に発症する後発型に分けられます。
乳幼児期に手術が必要になる場合がほとんどで眼圧が下がっても視力の発達が悪く弱視になる場合がほとんどです。
早発型では眼球の組織が柔らかいために眼圧が上昇するより眼球の組織が進展して大きくなってしまい角膜も大きくなり牛眼と言います。
早発型では高度な視力障害を残すことが多いので赤ちゃんが母親の胎内にいる間に超音波検査で眼球の大きさを確認すると早期発見、早期治療できます。
晩発型は発達異常緑内障と呼ばれ眼球は十分な硬さがあり眼球も角膜も大きくならず眼圧が上昇します。手術治療が第一選択です。
視野検査で異常を検出できないが眼底所見から緑内障と思われる状態を言います。
視野障害が出現する頃には25~35%の神経節細胞が失われているとされています。
緑内障の初期では構造変化が大きく末期には機能変化が大きいと言われます。
Ocular Hypertension Studyによれば35%で視野障害が眼底変化に先行し10%は同時進行、55%で眼底変化が先行しています。
したがって、構造(NFLD,OCTの乳頭パラメータ)か機能(視野1HFA30-2,10-2)のどちらかに変化があった時緑内障と判断して良いと考えられますが研究を待つのが現状です。